アンゼルム・キーファー ソラリス

国内アート

アート旅ブログのマチです。

年度当初から気になっていた展覧会アンゼルム・キーファー ソラリスへ行ってきた。
会場はなんと、世界遺産 「元離宮 二条城」
どんな展覧会になるのかワクワクしながら向かった。

二条城のカラーと言えば金。

元離宮 二条城

☆ 国宝 二の丸御殿
修学旅行で訪れた時にはその価値が全くわかっていなかった。
友だちと寝泊まりするのが単純に楽しかった。
大人になってやっと素晴らしさが身にしみるようになって、有難い気持ちで国宝二の丸を見学した。

1603年築城。
徳川家の栄枯盛衰と歴史の移り変わりを見守ったお城。
1867年の「大政奉還」のシーンは印象的で記憶にある。
門構えからしてとても立派。

場内の障壁画などはレプリカだけれど、その迫力は十分に伝わってくる。
狩野派によって描かれた豪華絢爛な障壁画の本物は別館に展示されている。
大広間四の間<松鷹図>

松の枝ぶり、幹のたらし込みの技法も詳細に見られる。

展覧会

満を持して、展覧会場へ。
通常非公開の台所・御清所(重要文化財)で行われていた。

入ってすぐのインスタレーション。
圧倒的!

Ra 「ラー」 
青空に映えるキーファー彫刻。
二条城台所の屋根と彫刻の羽はともに鈍色をたたえてマッチしていている。
ここにあるべきものと言わんばかり。

よく見ると、中央部はパレットになっている。親指を通す穴が見える。
エジプト神「ラー」はさらに高みを目指すことを表すがごとく空に向かって伸びている。

蛇は「エジプト神」と対局にあるものと位置づけられれている。下から虎視眈々と狙っているように見える。

「オクタビオ・パスのために」
幅10mの大作が入口に置かれている。
物質感が半端ない。石、岩石、顔料、ニス、金箔などキャンパスにダイレクトに張り付けられている。
中央下の叫ぶ人の顔から今にも声が聞こえそうな気がする。
鼻や一枚一枚の歯までリアルに作られている。
今まで迫害されたり、認められなかった人たちの叫びなのか。
オクビタス・パスとはメキシコを代表する詩人。キーファーは詩から発想して作品のイメージを膨らませている

緑色の緑青は時間の経過を表しているようにも思う。

キーファー作品は建物の太い梁に負けない力強さを発揮している。

「オーロラ」 日露戦争のロシア巡洋船の名前からとっている。

広島の原爆で焼け残った学校の骨組みの下に乳母車がつけられている。
ウクライナのオデッセイを舞台にした映画「戦艦ポチョムキン」の中に出てくるシーンを作品にしている。
長い階段を落ちていく乳母車。誰にも救えないのか。
現在起きている争いを想起してしまう。

キーファーの選ぶ素材「金」は常にそこにあることの象徴であり、不変を表している。
一方、「錆」は流動的で成長、変化するものを体現している。

作品の画像を取り忘れたが印象に残った作品が
「月のさるかさの雫やおつらん」
江戸後期の京都の歌人 大田垣蓮月の和歌をもとにしている。
パレットから絵の具がしたたっている様子が作品になている。

キーファーは小説、詩、音楽などからインスピレーションを得て時間をかけて創作活動をしていると、語っていた。

枯れたひまわりから種が取れて、また花をさかせる。循環を作品にしているのか。

「モーゲンソー計画」
アメリカによる戦後ドイツの占領計画のことを題材にしている。
ドイツから資源を奪い、穀物だけを栽培する国にしてしまうという内容だったようだ。

金の蛇を発見。

本もある。聖書か?

4畳のいろりで料理を温めた御清所に設置された作品。

このようなインスタレーションを二条城の御清所に展開することが本当にすごいと思う。
作品と建築の相乗効果で鑑賞者にぐっと迫ってくる。

麦やトウモロコシは布、粘土、石膏、テラコッタなどを固めて彩色している。

「ヨゼフの夢」

「デーメーテール December」
なんとも美しく悲し気に見える。

厚塗りのマチエールも魅力的だ。

「ダナエ」
キーファーは女性差別の問題にも目を向けている。

「アンゼウム・キーファー ここにあり」
ドイツの軍服を着た自身の後ろ姿を描いている。
第二次大戦前後の歴史下でのドイツを忘れないようにというメッセージがこめられているのか、解釈は鑑賞者に委ねられている。当初ドイツ国民も目を背けていたことを作品にしている。

「ボソン解放弦」
夜空に浮かぶ星座が描かれているように見える。
金箔は二条城二の丸の障壁画を描いた狩野派から影響を受けているそうだ。

「古代の女性たち」シリーズ
どれも頭部が奪われて、岩や書物などの物体に置き換えられている。
女性の思想が男性によって奪われたことを暗示している。

「プトレマイス」
石膏でできたドレスは美しいけれど、頭部がないことがかえって悲しい。

主催は京都市と青山のギャラリー、ファーガス・マカフィー。
展覧会のキュレーションは中目黒のn&aギャラリーオーナー南条史生。
歴史に残る展覧会を企画してくれたことに感謝する一日だった。
軽井沢セゾン美術館で鑑賞してから少しずつキーファーワールドに近づいて、今回深く知ることができた。これからも注目していきたい。

アクセス

二条城アクセス
二条城アクセス
二条城アクセス

最後のショップで見忘れていた作品を教えてくれた図録販売のスタッフさんにも感謝。
こんな出会いも旅アートの魅力だ。

アートっていいなぁ。今日も心豊かに。

京都 二条城と寛永文化 [ Living History in 京都・二条城 協議会 ]

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