アート旅ブログのマチです。
大阪 中之島美術館で見逃してしまった”髙島野十郎展”が渋谷に巡回することを知って、いそいそと出かけていきました。
髙島野十郎展の様子と基本情報などお伝えしたいと思います。
渋谷区立松濤美術館
建築として
設計は昭和期に和風住宅を手がけた代表的建築家白井晟一。
静岡県立芹沢銈介美術館や麻布台にあるノアビル(黒くどっしりとした建物)も設計しています。
同時代のモダニスム建築家とは一線を画して、機能性よりも哲学的精神性を重視した建築家で作品は独創的です。
この松濤美術館もファサードは石を積み上げて、円弧を描く形になっていて、重厚でいて神秘的。


エントランスを入ってすぐはオニキスを薄くスライスした光天井になっています。
柔らかい光が出迎えてくれます。

地下から地上にのびるドラマチックな吹き抜け空間には噴水が設置されていて、鑑賞者の気分を盛るあげてくれます。

松濤美術館の館内も素晴らしい。
優美な曲線を描く階段。
展示室では明暗の光のコントラストが見られます。

没後50年 髙島野十郎展
1890年生まれの髙島野十郎は東京帝国大学農学部を首席で卒業しながらも、画家のみちへ進みます。
既存の美術団体には属さず、独自の視点と精密な筆致で風景や静物を描きました。
その時代の流行には迎合せず、独自の鋭い写実表現を追求したのです。

「夏雲」

☆プロローグ 野十郎とはだれか
第一章 時代とともに
「からすうり」「洋梨とブドウ」「春の海」「月」「こぶしとリンゴ」「けし」などの福岡県立美術館所蔵の作品が超絶技巧の写実でとても素敵でした。
筆跡を残さない丁寧で細かい筆致を間近に見ることができます。
残念ながら、撮影は禁止。
第二章 人とともに
髙島野十郎「田園太陽」
交流のあった作家の作品では、岸田劉生「林檎三個」、木村荘八「静物」が目を惹きました。
第三章 風とともに
「ひまわり」まっすぐに伸びたひまわりの茎が上昇性を表している作品。
リズミカルに配されるまっすぐなひまわりが印象的です。
「積る」山形の雪景色の描き方が良かったです。
第四章 仏とともに
「春の夜」「割れた皿」は生命、無常観を表現するヴァニタスがテーマで髙島野十郎氏の内面がにじみ出ているように感じました。

☆エピローグ 野十郎とともに
2階の一番奥の展示スペースは撮影可能。
「椿とりんご」 「すもも」
11個のすももが転がされている。色やつやが絶妙に描き分けられています。
白布の質感まで伝わってきます。
今作は、川上弘美氏の『真鶴』の表紙にもなっています。

「壺とグラスと果実」
グラスの描きかたが秀逸。輪郭と光の当たり方で表現しています。
オランダの静物画を思い出しました。
リンゴの艶が見事。

「さくらんぼ」
熟れ具合の違いが写実に描かれている作品。
色、つや、へたの曲がったところなどに見入ってしまいました。

「桃とすもも」
手触りや桃の香り、クロスの質感まで想像される絵画。
果実の位置、置き方も計算されつくしているように感じます。

「パイプ」
たちのぼる煙をこんなにリアルに描けるなんて、素晴らしい。
重厚な額装も素敵。
やがては消えてしまう煙に注目します。

「秋陽」
太陽の描きかたはゴッホの影響か。
まぶしいほどの光をグラデーションで表現しています。
光と影の対比が美しい作品です。

「ろうそく」シリーズ
野十郎芸術を象徴する作品であり、生涯を通じて描き続けられたモチーフです。
初めてみたのは6年前の瀬戸内市立美術館。
この蝋燭の作品に惹き込まれました。
作品は個展などには出さず、お世話になった方や友人に贈られたそうです。
蝋燭は仏教の献灯の儀を想起させます。
無に近づく蝋燭にどんな思いをのせて描いたのか。

蝋燭の芯から外炎までの色の変化が美しい作品。マチエールが見えるのも今作のお気に入りポイントです。

「満月」
光の明るさは闇の暗さもひきたてています。
満月を真ん中に配しているところ、右上の樹木のシルエットがとても素敵な作品。
闇に描き出す月の作品は、野十郎芸術の真骨頂。

「睡蓮」
今作は野十郎氏の絶筆作品です。
睡蓮の花、葉、水面に映り込んだ影も克明に描いています。
髙島野十郎氏は生前は無名だったけれど、1986年の福岡県立美術館での初回顧展で再評価されるようになりました。
晩年は電気ガス、水道も通じていない千葉県柏の小屋で静かに制作に没頭していたそうです。

遺稿ノート
絵に対する考えや、旅先で詠んだ詩歌などがランダムに書かれています。
資料から野十郎氏の写実が仏教的な考えに基づくものであったことが明確に判明しました。

展覧会情報

☆60歳以上のシニアは身分証提示で半額になります。

アクセス

まとめ
独特な世界観を表現した白井晟一建築の美術館で、独自の境地を追求し続けた髙島野十郎の作品を鑑賞できる素晴らしい展覧会でした。
自分の思想を貫き通す揺るがない精神を感じました。
自分の感性や思いは自分だけのものだから、大事にしてこだわっていくべきだなぁと実感。
アートや建築は後世に残り、後の人たちに影響を与える役割を果たせることが本当に素晴らしい。
たくさんの方が鑑賞して、何かを感じ取ってくれたらと思います。
2026年9月6日まで。
過去の松濤美術館での展覧会、須田悦弘展の記事もご覧いただけたら嬉しいです。
アートっていいなぁ。今日も心豊かに。


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