杉本博司 絶滅写真

国内アート

アート旅ブログのマチです。

アートのお友だちが誘ってくれたので、美術家杉本博司氏の展覧会に行ってきました。

様々なジャンルに造詣が深いお友だちからたくさんの刺激を受けて、アートを楽しんでいます。

一人もいいのだけれど、共有できるのはやっぱり楽しさ倍増します。

ということで、今回は杉本博司展 絶滅写真についてお伝えします。

最後までお付き合いください。

東京国立近代美術館

建築

建築設計はモダニズムの巨匠 谷口吉生氏。

シンプルでとても潔よい佇まいです。

竹橋という立地から過去の日本(江戸城お濠)近代都市(丸の内)の接点にモダンなコンクリート建築を設計しました。

ピロティ構造で支えられた空間が特徴的。

美術館正面の小さな広場にはイサム・ノグチ「門」多田美波「Chiaroscuro」が配され、外部とのつなぎになっています。

企画展 絶滅写真 杉本博司

1章 時間・光・記憶

<ジオラマ>

野生動物の生態をリアルに再現した自然史博物館のジオラマ展示を大判カメラで撮影したシリーズ。

「ガラパゴス」

動かないはく製をあたかも命ある動物の一瞬の様子のように写されています。

一連の作品群は現代美術家杉本博司のデビュー作となりました。

「ゴリラ」

<劇場>

一本の映画を始まりから終わりまで長時間露光で撮影するとどうなるか。

真っ白に輝く四角い光へと還元される。

有名な劇場から地方のドライブインまで様々な場所で撮影が重ねられました。

「ガルニエ宮、パリ」オペラハウス

「ユニオンシティ・ドライブイン、ユニオンシティ」

夜空のドライブイン。

「華厳の滝」

日本の水を撮影することに着想を得て行われました。

海を撮る「海景」シリーズに繋がっていく。

<海景>

水平線をはさんで、上半分は空、下半分は海。

この眺めは数十億年前、地球上に水と大気が発生して以来変わらずあり続けている。

写真を時間をさかのぼる装置として用いている。

シンプルに美しい!

「カリブ海、ジャマイカ」

「ボーデン湖、ウットヴィル」

2章 観念の形

建築

「私は大型カメラを使い、焦点を暈すことによって、建築が建つ前の建築家の脳内ビジョンは再現できるのではと 考えた。 杉本の言葉:「影老日記」より引用

「S.C.ジョンソンビル」 フランク・ロイド・ライトの初期名作

「クライスラービル」

「ワールド・トレード・センター」

崩落2年前の姿を思い出して

「サヴォア邸」

白い箱かざりけなさをこころがけ 凝るに凝ったりコルビュジェのいえ

杉本博司 展覧会 キャプションより 引用

パリ郊外 Poissyのコルビュジェの名建築。4年前のマチの思い出です。

「数理模型014」

三次関数の数式を立体化した数理模型を撮影したシリーズ。

数式は美しいというけれど、立体にすると納得できる。

素晴らしい曲線。

「観念の形」

「スタイアライズド・スカルプチャー120」

「人類の衣服の歴史は人類の歴史そのものと同じほど古い。」

杉本の言葉:「影老日記」より引用

クリスチャン・ディオール

モンドリアンを想う

”モダニズムの十字架まとうドレスかな 罪をせおいて磔刑に処さん”

展覧会 キャプションより引用

3章 絶滅写真

写真術の始祖タルボットの陰画から陽画を焼いたシリーズ。

「フォトジェニック・ドローイング017」

屋根の輪郭線、レイコック・アビー 1835-1839年頃

色合いと深みがとても素敵な作品。

「ダイアナ、プリンセス・オブ・ウェールズ」

ロンドンのマダム・タッソー蝋人形館で撮影された肖像のシリーズ。

「放電場」

暗室内で人工的に放電を発生させその小さな雷のような光跡をとらえたシリーズ。

「陰翳礼讃」

暗闇の中で風に揺れる火を見つめながら、「蝋燭の一生」を記録した作品。

暗がりに宿る伝統的な美を尊んだ。

揺らいだ様子がとても良い。

「Opticks 416」

ニュートンが試みたプリズムによる分光実験を再現し、光の色彩を観測した作品。

「伝寂蓮法師筆 地獄草紙詞書断簡」

「光学硝子五輪塔」 ノルウェー海、ペステローデン諸島

地獄草紙を思う

”応仁やはたまた関東大震災 びいにじゅうく(美二重苦)にも燃え果てて今”

杉本の言葉:展覧会キャプションより引用

五輪塔、いつみても美しい。

所蔵作品展 MOMATコレクション

福田平八郎「雨」

一面の瓦に雨粒があたる様子。

微妙な瓦の色の違いを楽しむ作品。

デザイン性も感じます。

パウル・クレー「花ひらく木をめぐる抽象」

ゆがんだ線と明るい色と暗い色のコントラスト、色の配色が秀逸。

大好きな作品です。

ゆっくり開こうとする花の開花を想像させます。

クレーは、ヴァルター・クロピウスに招かれバウハウスで教鞭をとりました。

カンデンスキーとともに独自の色彩論、造形論を学生に伝えました。

美しい!

ジョアン・ミロ「絵画詩」

おぉ!あの人やっちゃったのね

人の体を表すような線が踊っています。

ト音記号に見えてしまったけど、どうでしょう?

三岸好太郎「雲の上を飛ぶ蝶」

海を渡る習性をもつ蝶の話を聞いてこの作品を構想したようです。

奥から湧いてくるように飛ぶ蝶に悲しさを感じてしまう、なぜだろう?

ピエール・ボナール「プロヴァンスの風景」

輪郭がなく、全体的に茫洋とした画面に優し気な色があふれている。

抽象とも具象ともとれる作品。

20世紀絵画史の中で圧倒的な色の使い手といわれた作家を象徴しているように見えます。

松本竣介「N駅近く」

モンタージュの技法で描かれています。

建物の重なり、さらにその上に何人かの人物が見えます。

作家の記憶の断片を重ね合わせて作品にしている印象を受けます。

何色もの色を重ね削り、また重ね。

なんとも言えない味を醸しだしています。ずっと見ていたい作品です。

奈良美智「Harmless Kitty」

「見ないで、私のことは放っておいて」と、言わんばかりの表情がとてもいい。

奈良さんの作品の真骨頂。

4階の「眺めの良い部屋」でも見られる椅子

イタリア人デザイナー マリオ・ペリーニの「CABチェア」

ダークブラウンの色も素敵。

フレームもすべて革で包んでいます。

原田直次郎「騎龍観音」 重要文化財

初めて来館した時に、ギャラリートークを体験した思い出深い作品。

周りで何が起こっても心落ち着て涼やかに過ごしたいと、思ってしまう。

細部まで丁寧に描き込まれた力作。

置かれていたのが護国寺の本堂というエピソードもある。

川上涼花「鉄路」

白、オレンジ、黄色、青などの色彩と筆跡を残すマチエールはゴッホの影響だそうだ。

上から見下ろす構図もとても良い。

奥に光があることで手前から奥への流れ、車両の動きも感じられます。

関根正三「三星」

冬の星座、オリオン座の中央の三つの星。

中央が作家、左は姉、右は思いをよせていた女性。 

作家の頭に巻かれた布は手術の痕のようだ。

村山槐多「バラと少女」

大きく咲き誇ったバラとほほを染めた田舎の純朴な少女の対比がいい。

作家は22歳で亡くなっています。夭折の画家。

吉田博「帆船 夕日」

水辺のリフレクションが版画で巧みに表現されています。

代表作の一つ。

小原古邨「兎二羽」

モチーフと構図、色合いがとても素敵な作品。

福田一郎「牛」

日本にシュールレアリスムを紹介するために貴重な役割を果たした作家です。

狛犬のようにデフォルメされた牛が印象的。

浅原清隆「郷愁」

兵庫県播磨の海岸からヒントをえて制作しています。

青のグラデーションがとても美しく、いつまでも見ていられる作品。

母の胎内をイメージしているそうです。

藤島武二「港の朝陽」

モネの「印象日の出」を想起させる作品。

船、水面、太陽、空の色遣い、描き方が素晴らしい。

漆原英子「Midnight Circus」

動物の光る眼がいくつか見えるようです。

鏡が割れて映し出された様子にも見ます。

きばのようなピンクの三角が意味するものは何だろう?

赤い物体は肉片か。

想像を掻きたてられます。

立石タイガー「昭和二十一年筑豊之図」

富士山、列車、働く人、戦闘機、叫び声をあげる動物、いろいろなものが描かれています。

戦争で受けた日本の傷を表しているのか?

色彩は鮮やかだけれど、描かれるものは凄惨なイメージでギャップを感じます。

ドレスのドレープのようなものが印象的。

岡本太郎「夜明け」

赤、青、白、黄色 岡本太郎作品に使われるカラーが激しい線となっています。

”さまざまな矛盾を矛盾のままに対決させる「対極主義」の制作理念を唱えて、第二次大戦後の美術界に旋風を巻き起こしました。”
展覧会 キャプションより引用

山下菊二「植民地工場」

工場というより牢屋のようで格子の外から長い手が侵略してきているように見えます。

出口は固く閉ざされていて囚われるイメージをもちます。

時代性を感じます。

山口勝弘「ヴィクトリーヌ№47」

ヴィトリーヌとは、ショーケースを意味。

第一層にモールガラス、第二層に木箱の中ほどに装着されたガラスに描かれた画像、第三層、木箱基底部に貼られた紙に描かれた画像で出来上がったいる。

不思議な立体作品。

ソル・ルイット「ウォール・ドローイング#769 」

黒い壁を覆う幅36インチのグリッド。角や辺から発する円弧、直線、非直線から二種類を体系的に使った組み合わせ全部。

「バタフライチェア」

三木富雄「EAR」

「耳が私を選んだ。」名言

アルミニウム素材の作品。

高松次郎「№273(影)」

加山又造「群鶴図」

鶴を連続的に配し、デザイン性の高い美しい日本画を作りあげています。

酒井抱一の影響が見られるそうです。

山本丘人「狭霧野」

繊細な表現に魅了されます。

前本彰子「大紅蓮」

ラメが輝く大きさドレスと幅6mを超える背後の幕が目を惹きます。

マチスのダンスのオマージュ。

映画の美術に使用された作品です。力強い女性を感じます。

白井美穂 「Waterfall」(Why Are You Afraid of Black and White?)

滝のように髪の毛が流れている。若さと老い。

巨大な色面に一本の線が入る構図はアメリカの抽象表現主義の画家バーネット・ニューマンの「ジップ」シリーズの影響か?オマージュ作品か?

草間彌生「冥界への道標」

村上早「まわる」

リトグラフ・エッチングという手法で制作しています。

銅版に刻まれた線は「心の傷」、線を埋めるインクは「血」、インクを載せる紙は「ガーゼ」であると作家は語っています。

イケムラレイコ「横たわる少女」

ミリアム・カーン「無題」

スイス・バーゼル出身の現代アーティスト。1970年代のフェミニズム運動や反核運動に影響を受けた身体性・政治性の強い表現で知られています。

作品に登場する人物は宇宙人に見えてします。

手で直接描く手法を使って制作するのが特徴の一つでもあります。

吉原治良「海辺の静物」

シュールな作品に見える。

矢橋六郎「廃墟」

どちらかというと、絵本の挿絵で古いお城のようなイメージをもちました。

難波田龍起「黄色と赤の階調」

アントニー・レーモンド「反映/思索」

展覧会基本情報

HPより引用
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HPより引用
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まとめ

杉本博司氏の初期から現在に至る作品制作の過程を追うことができる貴重な展覧会でした。

作品に添えられたキャプションや杉本氏の言葉、言葉遊びの句がとても印象的で、これぞ杉本アートと納得しました。

圧倒的な美意識が根底にあることは言わずもがな。

アートっていいなぁ。今日も心豊かに。

ユリイカ(2026 6(第58巻第7号)) 詩と批評 特集:杉本博司

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